有機大豆作の土づくり対策

土づくりで重要な役割を果たす有機物資材の利用や留意事項は、有機稲作とも共通の内容が多いので、重複を避け、本項では慣行栽培圃場から有機大豆作へ移行時の土づくりを中心に解説する。

有機質資材の施用

転作田での有機大豆作を開始する場合、稲作時に常時稲わら等を圃場に還元(稲刈り後に鍬込む等) してきた圃場では、地力窒素が高いことが多い。そのような場合には有機栽培に移行する際、特に堆肥等の施用による土づくりを意識する必要はない。ただし、中間地から温暖地にかけては、裏作に麦類を作付ける場合や稲わらを持ち出している稲作田では、前年秋に堆肥の施用を行う必要がある。
その際、熟成した堆肥を施用する必要があるが、鶏糞や油かす類だけでは窒素含有量が高く、炭素量が少ないため、土づくりの面からは適切とは言えない。そこで、稲わらや籾殻等を原料とした堆肥が望ましいが、入手困難な場合には、敷料を多く含む牛糞堆肥が望ましく、入手が比較的容易である。
有機栽培へ移行する際留意すべき点は、畑地利用期間が長い転換田や普通畑を利用する場合である。こうした圃場では地力窒素が低下している可能性があり、また、作付履歴によってはダイズシストセンチュウの密度が高いこともあるので、できれば1 年間休耕して堆肥を施用し、夏秋期にはクロタラリアやエン麦等を、冬季間にはアカクローバーやクリムソンクローバー、緑肥用麦等を作付けして地力の向上を図り、ダイズシストセンチュウの密度を低下させることが望まれる。休耕が困難でも秋の堆肥施用とアカクローバー等の作付けは実施しておきたい。このことは、耕作放棄地を復元する場合も同様で、堆肥施用と緑肥作物の作付けは圃場内の生態系の発達を促す。圃場内の生態系を豊かにする観点から、腐葉土に米ぬかを混ぜて圃場に施用することも有効である。
堆肥の施用量は施用時期や大豆の播種までの期間、使用する堆肥の質により異なるが、初期の段階には、概ね寒冷地では1~2t/10a、中間地で2~3t/10a 程度、暖地では3~5t/10a を目安(牛糞の場合はその半分程度) に施用し、土づくりを促進する。ただし、牛糞の使用に当たっては、乾燥牛糞を施用するとダイズシストセンチュウのシストの孵化率が高まるという試験結果があるので、大豆の播種直前の牛糞施用は危険である。孵化したセンチュウは宿主作物がないと長期生存ができないので、大豆播種までに最低でも1 カ月以上空け、ダイズシストセンチュウの密度を下げるとよい。

理化学性の改善

圃場の排水性を確保し、堆肥等の施用を行った後に、土壌の理化学性についての改善を行う。有機栽培の場合の理化学性の目標値は一般的な数値を目安とし、乾土100g 当たりリン酸20mg、加里20mg、石灰200mg、苦土30mg程度(塩基飽和度は80%程度を目安とする) であればよい。ただし、大豆の好適pHは6.0~6.5 であり、土壌酸性化の影響は大豆より根粒菌の方が影響を受けるので、転換畑や耕作放棄地等からの復元の際には必ずpHを測定し、これより低ければ有機石灰等で矯正する。

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