有機大豆作の病害虫防除対策

主な虫害の発生生態と対策

有機大豆作では、発芽・苗立ちを良好にさせることとともに、害虫対策が最も大きな克服すべき課題になっている。有機大豆作を定着させている地域や農業者は、病虫害をあまり問題にしていないが、新規の有機大豆作者にとっては、害虫で苦い目にあい栽培を諦めた人も多いという。そこで、予め主要な病害虫の発生要因や被害状況を知り、その対処法を知っておく必要がある。
なお、(独)近畿中国四国農業研究センターでは、大豆に発生する病害虫を容易に診断できるサイトを公開しているので参考にされたい。
https://www.naro.affrc.go.jp/org/narc/daizu2020/index.html

ハスモンヨトウ

被害の状況

関東から西南暖地にかけて被害が大きく、特に九州地方での被害は大きくなりやすい。若齢幼虫は葉裏に産卵された卵塊から孵化して表皮を残し食害するため、被害葉は白くすけてみえる。幼虫が大きくなると食害量も急増し、葉脈だけを残して葉を網の目状に食べ、若い莢も食害する。多発生すると畑全体が枝や葉柄などを残すだけとなることもある。食害葉面積率が約20%を超えると減収が起きる。産卵し、圃場に幼虫が発生するのは、西日本では7 月中旬からで、8 月から9 月にかけてで、雨の少ない年は発生が多い。多食性で約30 科、約100 種の植物を食害する。被害の年次間差は大きい。

生態

野外での越冬形態・場所は不明確で、暖地の一部を除き野外ではほとんどが越冬できないで死亡するか、施設内で越冬すると考えられている。そのため、越冬可能な暖地から成虫が長距離飛来し主な発生源となっているとも推測されている。転作田は普通畑に比べ生物相が単純で天敵が少ないためか、発生しやすい。

対策

  • 過繁茂とならないよう多肥を避け、疎植とする栽培を心がける。
  • 圃場排水対策を施し、培土を行うなどの排水性の向上により、根の活性化に努める。
  • 枯れ草などで地面を被覆するなど、多様な生物が生息しやすい環境を整え、天敵による抑制を図る。
  • 有機JAS農薬としてはBT水和剤、ハスモンヨトウ核多角体病ウイルス水和剤が使用できる。
  • 特に発生被害が多い所で小規模栽培の場合には、防虫ネットで被害を回避している例もある。

カメムシ類

被害の状況

カメムシ類は子実と葉に被害を与える。子実の被害は、吸実性カメムシ類の成虫や幼虫が口針を莢に貫通して子実に挿し込み、その内容物を吸収することで生ずる。外見上は莢の表面にも葉や茎にも外傷がないため被害が目立たないが、子実が直接吸害されるため著しく減収するほか、外観、品質も低下する。葉の被害はメダカナガカメムシの成虫や幼虫が口針を葉肉にさし込み、その組織を破壊して吸汁することで起きる。外見上は葉が白化して目立つが、減収の程度は低い。吸実性カメムシには幾つかの加害種がある。

生態

カメムシ類はすべて成虫態で越冬する。越冬場所は、多くの種類では日当たりの良い草むらや落葉の間であるが、アオクサカメムシやこの近縁種は常緑植物の葉間や茂みの中である。カメムシ類は多犯性で、成虫は幼虫が発育できる寄生植物上に産卵する。幼虫期は5齢からなり、成虫と同じ食性をもつ。
カメムシ類は越冬場所と食草に恵まれた環境で発生が多く、一般に寒地よりも暖地に、内陸平坦地よりも山間・山麓、海岸部などに、内陸部では大きな河川沿いに多い。日当たりがよく、比較的乾燥する小山や林に、クズやレンゲ、その他の野生食草が自生している場所は好適な発生地で、このような場所の近くでは多発しやすい。

対策

  • 野生植物が結実しないように、または結実期間がカメムシ類の全発育期間(約4 週間) 以上持続しないように、圃場内はもちろん山野や土手などに自生するそれらを刈り払うことで、カメムシ類の増加を防ぐ。
  • 吸実性カメムシ類による被害は、一般に大豆を晩播きにすると軽くなるため、被害が激しい地方では晩生種を選定し、播種期を遅らせる。
  • 夏大豆では早播で被害を回避している例もあるので、極早生品種を早播きして被害を軽減する。
  • 着莢数、着粒数の多い品種、小粒品種、油脂含有率の高い品種は被害が少ない傾向にある。逆に着莢数の少ない大粒品種には被害が多い。
  • 適正な栽植密度の範囲内では、密植するほど被害率が低くなる。
  • 越冬場所になる木材、石礫、作物残幹、枯草などを片付けて、越冬場所を少なくする。

アブラムシ類

被害の状況

大豆に被害を及ぼすアブラムシ類は、主にジャガイモヒゲナガアブラムシ、ダイズアブラムシ、マメアブラムシである。ジャガイモヒゲナガアブラムシは、1~3㎜程の黄色の虫で、葉裏に5~ 20 匹程群れをつくり汁を吸い、吸われた部分が黄色に、後に褐色になる。病害と間違われやすいが、葉裏に虫や白い脱皮殻があるので区別できる。ジャガイモヒゲナガアブラムシはダイズわい化病を媒介し、感染したダイズはわい化症状のほか、葉の委縮や黄化が発生する。ダイズアブラムシは0.5~2mmくらいの黄緑色の虫で、葉や莢に数十~数百匹程が群がり汁を吸い、新葉が奇形になり、株の生育が遅れる。マメアブラムシは、0.5~2mm程の黒色の虫で、葉に群がり汁を吸い、多発すると新葉が奇形になり株の生育が遅れる。汁を吸う時にウイルス病を媒介する。ウイルス病は生育初期が特に問題で、葉の色がまだらになったり、葉や株が奇形になる。

生態

3種類のアブラムシとも春から秋まで10 回以上発生を繰り返し、ジャガイモヒゲナガアブラムシは7~9月、ダイズアブラムシは7~8月、マメアブラムシは4~6月に多い。産卵せずに直接幼虫を産むため、短期間に猛烈に増えることがある。一方、天敵も非常に多く、多数のアブラムシが急減することもある。ジャガイモヒゲナガアブラムシはジャガイモ・キュウリなど、ダイズアブラムシはダイズ・ツルマメなど、マメアブラムシはインゲン・ソラマメなどで発生する。

対策

  • 栄養過多あるいは生育が貧弱な場合に寄生しやすい。適切な肥培管理、土づくりで作物体を健全に育てることが予防の前提となる。
  • わい化病では感染源が圃場周辺の野生化したクローバや経年草地のクローバのことが多いので、このような保毒源を減らし保毒虫率を低下させる。
  • 不織布やネットで覆い物理的に有翅虫が寄生することを妨げ、ウイルスの感染を防ぐ。
  • 銀色の反射資材などの忌避資材を利用して有翅虫の寄生量を減らす。
  • 麦類をリビングマルチとして大豆栽培を行うと、ジャガイモヒゲナガアブラムシによって媒介されるダイズわい化病が抑制される。小麦の草丈がダイズよりも高いと同アブラムシの飛来を防止する効果がある。

ダイズシストセンチュウ

被害の状況

ダイズシストセンチュウ(Heterodera glycines)の寄生を受けた大豆は生育が劣り茎葉は黄化する。このような株の根の表面には、ケシ粒大の黄白色粒子が肉眼で認められる。これは本線虫の雌成虫であり、診断上有力な標徴である。被害を受けた大豆の根系は分布が浅く、根の量が減少するとともに根粒の形成が劣る。被害の発生は圃場内でスポット状に円く現れるために「月夜病」と呼ばれる。

生態

本線虫は関東以北で普遍的に分布し、それ以南の地域では散発的な発生が見られる。宿主範囲はネコブセンチュウやネグサレセンチュウに比べ狭く、数種類のマメ科植物の地下部に寄生するが、大豆、アズキ及びインゲンが被害を受ける。土壌中のシスト内の卵から孵化した2期幼虫は、根の先端部から侵入する。根内に定着した2期幼虫は、宿主植物組織に数個の巨大細胞を形成させ、そこから栄養を摂取する。2期幼虫は3 回の脱皮を繰り返し、3 期幼虫、4 期幼虫を経て成虫となるが、雌虫はレモン型に肥大し、頸部を根内に入れたまま体の大部分を根の外側に露出させる。雄虫は細長い形をした雄成虫となり、根から土壌中に移動し雌成虫と交尾を行う。交尾を行った雌成虫は体内に卵を蔵した状態で耐久性の高いシストになる。国内には大豆品種に対する寄生性の違いから3つのレース(レース1、3、5) が知られている。

対策

典型的な土壌伝染性の線虫で、一旦発生すると根絶は困難なため、発生地で使用したトラクター等の農機具の洗浄を行って汚染土壌を除去し、未発生地への拡大を防ぐ。発生地では本線虫の密度を上昇させないため、大豆以外に宿主となる豆類(アズキ、インゲン) の作付けを避け、非寄主作物(ムギ類、ジャガイモ等) を組み入れた輪作を行う。また、田畑輪換は本線虫の密度を低下させる。クローバー類(アカクローバー、クリムソンクローバー) は本線虫の寄生を受けるが、雌成虫になるまで発育できないために、線虫密度が低下することから対抗植物として利用できる。
抵抗性品種として「ワセスズナリ」、「ナンブシロメ」、「リュウホウ」、「ライデン」、「スズカリ」、「トモユタカ」、「スズユタカ」、「オクシロメ」などがある。なお、品種の選択に当たっては、それぞれの地域に分布するシストセンチュウのレースを考慮する必要がある。

タネバエ

被害の状況

幼虫が出芽前の種子、出芽中の種子、出芽直後の幼苗などを食害して出芽不能、奇形の不健全苗、幼苗の枯死などを起こす。多くの場合、幼虫が食害部にいるので、それと診断できる。播種後地温に応じて数日前後で出芽するが、出芽期がきても出芽してこない場合は土中の種子の状態を確認する必要がある。白色のうじ虫が食害している場合には、タネバエの食害と判断される。幼虫は白色から黄白色で細長い円錐形状をしており、成長すると6mm程になる。頭部は細く後方は次第に太くなり、背面には2 個の気門が突出している。
被害の多発場所では、耕起、整地、作条など土壌表面を動かした時に、土壌面で成虫が飛んだり、這ったりしているのがみられる。

生態

越冬は寒冷地では蛹で、暖地では蛹、幼虫、成虫で行われる。土中で越冬した蛹は3 月下旬から4 月上旬から羽化をはじめ、枯草の間などで越冬した成虫もこのことから圃場に飛来して産卵活動をはじめる。成虫は鶏糞、動物糞尿、魚粕、厩肥、緑肥などの腐臭に強く誘引される。また、耕起直後の湿った畑に集まり、土塊の間などに点々と産卵する。成虫は50~100 日間も生存し、1 匹の雌が700~1000 個の卵を産む。卵期間は2~8 日。孵化幼虫は土中を移動して有機物を食しながら発育し、種子や幼茎などに食入する。幼虫期間は春と秋の涼しい期間には20~25 日、夏の高温時には13~16 日程である。発生量は西南暖地では夏秋期に少ない。成虫の飛来量は耕耘時に土壌水分が多い場合や地温が適当にある場合に多い。

対策

成虫は臭気を発散する有機物に強く誘引されるので、有機物は播種時には臭気を発散しなくなるよう期間をおいて施す。あるいは幼虫が発生しても大豆茎が固くなった後に施用する。前作の刈り株や残根も次作までによく分解させておく。緑肥の鋤込みも播種までの期間を充分にとり、播種時に施用する堆肥は完熟したものを用いる。転作畑では排水対策による土壌の乾燥や砕土を丁寧に行って大豆の出芽を揃わせる。
過去にタネバエ被害が大きかった北海道の有機大豆作の例では、当初はロータリー後に播種機で播種していてタネバエ被害も大きかったが、現在はロータリー耕起後に逆転ロータリーで表層を砕土し、4 連播種機で播種した後鎮圧ロターを数回かけて問題を克服した。鎮圧後は足を踏み入れても沈まない程度まで鎮圧すると、タネバエ被害が目立たず、発芽揃いも高まった。タネバエは湿気と生の有機物がある所に産卵するが、土壌表面を鎮圧することでそれが防止できた。

マメシンクイガ

被害の状況

幼虫が莢内に食入し、内部の子実を食害する。食害を受けた子実は“くちかけ豆” となる。莢のごく若い時期に食害を受けると不稔となり、被害により収量・品質が低下し、また、播種時の発芽率は低下する。幼虫は9~12mmで橙紅色、成虫は13mm内外で前翅は灰褐色の地色に黄褐色の不規則な斑紋を有する。

生態

日本全土に分布し、関東以北では1世代である。幼虫態で土中で越冬し、7 月中旬頃から成虫が羽化する。関東地方では7 月下旬から産卵を始め、幼虫の最盛期は8 月中下旬である。成虫は不活発で遠方には移動しない。発生は寒冷地に多く低温年に多発する。晩生品種では幼虫の発育が遅れる傾向にある。

対策

  • 熟期の違う品種選択で被害を回避できる。例えば、関東地方では極早生種や晩生種は中生種より被害がはるかに少ない。裸大豆系統では耐虫性のものも多く、毛茸のない品種で莢の被害が少ない傾向にあるので、可能な限り強い品種を選ぶ。
  • 洪積火山灰土地帯に比べて沖積土地帯は一般的に被害が少ない。
  • 3 年以上の連作で被害が増大するが、寄生範囲は狭いので輪作を行い被害を低下させる。
  • 老熟幼虫で土壌中で越冬するので、秋耕も効果的である。転作田では冬期間湛水により土繭中で越冬中の老齢幼虫を死滅させ、発生源をなくすことができる。
  • 大豆の条間にトウモロコシを間作することで被害が軽減する(大豆5 条に1~ 2 条)。
  • ハゼリソウ科緑肥のアンジェリアを圃場周辺に栽培して、マメシンクイガの天敵を誘引する。播種期時は5~6 月で、50~60 日後に開花する。
  • 麦類の間作緑肥栽培は8 月には麦が枯れるので、マメシンクイガの土繭形成を阻害し、天敵など生物相を豊にする効果が期待される。
  • 宮城県の有機栽培事例では、5 作目で発生したマメシンクイガ被害に対し、中耕、土寄せ、溝切りにより圃場の排水性を向上させ、また、有機質肥料の施用中止で、雑草とマメシンクイガの被害を軽減させた。

マメハンミョウ

被害の状況

ツチハンミョウ科の甲虫で、成虫は体長1.2~1.8cm、体と前翅は黒色、頭部は橙赤色である。前翅と前胸背板に白い縦の条線をもつものもいる。被害は成虫が畑の一部分に群生し、葉脈を残して網目状に葉を暴食する。集団で株を加害しながら移動していく。大豆以外に、アズキ、インゲン、ナス、ジャガイモ、ハクサイ、ニンジンなどと被害作物は幅広い。

生態

東北南部以南に分布し、年1 回発生する。土中の蛹で越冬した後、成虫は7~8 月に出現する。成虫は豆類などの葉を食害後、土中に産卵する。孵化した幼虫は作物を加害することはなく、バッタやイナゴの卵などを食べて成長する。

対策

局部的に突発するため、早期発見に努める。バッタやイナゴなどが殖えないよう雑草管理を行い、幼虫密度を抑えることが予防策であるが、一度発生した場合は箸やトングなどで摘み取るしかない。体液にカンタリジンという毒が含まれ、触れただけで水ぶくれ状に腫れるので、決して素手では触らない。窒素過多でも本害虫の発生を助長する傾向があるので省施肥に努める。

ウコンノメイガ

被害の状況

ウコンノメイガは全国に分布し、特に北陸地方など日本海側に多い。山沿いの地域で発生が多い傾向にある。葉を巻煙草(ロール) 状にゆるく巻き、幼虫はその中に生息して葉を食害する。1匹の幼虫が食害しながら別の葉に移り、数枚の葉に食害を与える。子実を直接加害しないため、被害は深刻ではないが、多発時には全葉が被害を受ける。食害部は褐変して枯死することもあるが、多くは収量、品質の低下となる。

生態

越冬は幼虫態で地表近くの枯草、落葉などの中であり、北陸地方を基準にした場合、5 月頃野生の寄生植物であるアカソやカラムシ(クサマオ)で育つ。野生寄主で育った成虫は7 月から大豆畑に飛来産卵し、幼虫は7 月から8 月頃にかけて発生し、8 月から被害が急増する。9 月以降には被害が収束し、秋に再び野生寄主植物に戻る。成虫は燈火に飛来する性質がある。日中あまり活動せず葉裏などにいてほとんど見ることができない。

対策

近くに野生の寄主植物のアカソやカラムシ(いらくさ科) が植生している所は、被害が多い傾向があるので、それらの植物が近くにある所では以下の事項に注意して栽培する。

  • 大豆が過繁茂の圃場や葉色が濃い圃場で多発するため、施肥を抑えるとともに後効きするような施肥管理をしない。
  • 密植とせず、条間や株間を空けるなど疎植とする。
  • 播種が早いと多発しやすいため、播種期を遅らせて被害を回避する。しかし、通常時の播種に比べて生育が劣り、収量が低下しやすいため注意する。

シロイチモンジマダラメイガ

被害の状況

莢内の子実が大きくえぐられたように食害され、いわゆる“くちかけ豆” となる。また、子実が全部食い尽くされることも多い。莢内にはやや大粒の虫糞がみられる。本種の幼虫は類似しているマメシンクイガの幼虫に比べ、やや大型で緑色ないし桃緑色を帯びている。

生態

温暖地の害虫で世界の熱帯温帯に広く分布する。日本では九州、四国と本州の東北地方南部まで分布する。幼虫態で地表近くにごみや土粒などを集めその中で越冬する。卵は莢面ないし莢に近い茎などに1粒ずつ産み付け、卵は橙赤色を帯びる。孵化幼虫は莢面を数時間ないし10 数時間徘徊した後、莢内に食入する。成虫は夜間活動性で燈火にも飛来し、かなり遠距離を飛ぶことが出来る。加害作物は大豆の他、エンドウ、フジマメ、寄主植物としては日本ではアカシア、エニシダなど、関東地方で年3回発生し、第1回はエンドウ、極早生大豆、第2回は中生大豆、第3回は晩生大豆に発生する。山間部やそれに近い所で発生が多い傾向がある。8月上旬が高温で少雨になると発生が多くなる。

対策

  • この虫の被害は大豆の熟期と関係が深い。地方によって品種との関係は異なるが、関東地方では極早生種と中晩生種に多く、早生種は比較的少ないので、栽培品種の選定に注意する。
  • 卵寄生蜂の寄生率が非常に高いことがある。枯草被覆など天敵温存の圃場環境づくりを工夫する。
  • 多肥栽培、密植栽培は過繁茂や倒伏になりやすく、被害の増加を招く。適正施肥量とするとともに、栽植密度は通常よりも低めとする。

主な病害の発生生態と対策

紫斑病

病原菌と病徴

本病を引き起こす病原菌は不完全菌類に属するCercospora kikuchii で、大豆の葉、茎、莢、種子に発生する。種子の一部または全面が紫色に着色して品質低下をもたらす。本菌は大豆以外にツルマメ、アズキ、インゲンなどにも感染し、これらが伝染源になり得る。罹病した種子を播種すると、発芽後、子葉に褐色または紫色の斑点を生じる。病斑上で増殖した病原菌の胞子は下位葉から上位葉へと伝染を繰り返し、やがて莢に感染する。
紫斑粒の発生は莢に侵入した菌糸が種子に進展して感染することによって起こる。種子の発病につながる莢の感染適期は開花12~40 日後であり、紫斑粒は成熟期に向かって増加する。病原菌は感染種子中に菌糸の状態で生存して種子伝染を引き起こす。

対策

紫斑病の防止には、罹病種子を取り除き健全な種子のみを使用する。本病に罹病した大豆の残渣も伝染源となるため、これを集めて焼却処分するか、土中に埋める。過繁茂は本病を助長するため、畑の地力を考慮し施肥量を控えめにする。降雨は発病を助長し、紫斑粒発生の年次変動の主な要因となる。成熟期における病気の進行を最小限に抑えるため、適期に収穫し早期に乾燥する。抵抗性品種としては「フクユタカ」、「ミヤギシロメ」、「トモユタカ」、「タチナガハ」、「エンレイ」、「サチユタカ」、「赤莢」などがある。納豆用小粒品種では「すずほのか」、「すずかおり」、「すずおとめ」、「ユキシズカ」、「コスズ」などがある。多発が予想され、耕種的方法のみでは防除が困難な場合は、開花期30 日後まで(散布適期: 開花期14~28 日後)に有機JAS許容農薬である銅剤を散布する。

ウイルス病

病原体と病徴

大豆のウイルス病にはモザイク病、萎縮病、わい化病、退緑斑紋ウイルス病、斑紋病、微斑モザイク病がある。それぞれの病害を引き起こす病原ウイルスには複数種が関与するものがあり、国内では13 種が知られている。
それぞれのウイルス種や同じウイルス種の系統毎あるいは大豆の品種毎にも病徴が異なるが、葉に斑紋、葉脈透過、水疱状の隆起、モザイク、縮葉、葉巻、株全体のわい化、萎縮などの症状が現れる。モザイク病、萎縮病、ウイルス病では種子に褐色から黒色の斑紋を生じて種子の品質を低下させる。ウイルス病の多くはアブラムシによって伝搬されるが、ウリハムシモドキにより媒介されるインゲンマメ南部モザイクウイルス(ウイルス病) や線虫によって媒介される土壌伝染性のタバコ茎えそウイルス(斑紋病)もある。

対策

媒介昆虫であるアブラムシの防除が基本となる。そのため、(ⅰ)シルバーマルチの被覆によりアブラムシの飛来を防止する、(ⅱ)遅播きにより作期をずらしてアブラムシの発生しやすい時期を回避する、(ⅲ)第二次伝染を防止するため発病株は早期に抜き取る(種子伝染での発病株は初生葉の病徴で判断する)、(ⅳ)種子伝染を防止するため、発病株からの採種を避け、無病株の健全種子のみを用いる、(ⅴ)大豆以外のマメ科植物を宿主とするラッカセイわい化ウイルス(ウイルス病)、アルファルファモザイクウイルス(モザイク病) などでは感染したクローバが第一次伝染源となり、そこからのアブラムシの飛来によって伝搬されるため、畦畔など圃場周囲の植生にも注意し、クローバの抜取りや刈取りを行うなどの対策を取る。
モザイク病に対する抵抗性品種には「スズユタカ」、「タチユタカ」、「あやこがね」、「ギンレイ」などがある。
なお、本病原ウイルスには大豆品種に対する病原性の違いから5 系統(A、B、C、D、E) があるため、品種を選定するに当たってはその地域に分布する系統を考慮する必要がある。

立枯性病害

病原菌と病徴

大豆の立枯性病害には立枯病、黒根腐病、茎疫病、白絹病などがある。立枯病の病原菌は(ⅰ)Fusarium oxysporum f. sp. tracheiphilum と(ⅱ)Gibberella fujikuroi の2 種がある。本病に罹病した大豆は萎凋枯死するが、地際部の茎に縦長に褐色の病斑を生じる。本菌は土壌伝染性であり、大豆の連作により被害が激化する。また、(ⅰ)の病原菌は大豆以外にインゲンやエンドウなどのマメ科作物にも寄生し、(ⅱ)はイネばか苗病と同種である。本病は大豆の連作により被害が激しくなる。黒根腐病の病原菌は子のう菌類に属するCalonectria ilicicola である。
本菌に感染した大豆は、はじめ根に赤褐色筋状の病斑が現れ、変色部は次第に拡大融合して、ついには根系全体が黒褐色となり、細根は脱落して消失する。激しい場合は、主根のみが残り、「ゴボウ根」の症状を示し、簡単に引き抜けるようになる。地際部の茎には赤褐色~紫黒色の変色部が現れ、茎全体を取り巻くようにして次第に発達するが、地上部に2~3cm程度現れるだけで上部に伸展することはない。莢の肥大期から成熟期に近づく頃になると、赤~オレンジ色の子のう殻が観察される。地上部では葉に黄化症状が現れる。本菌は微小菌核を形成し、これが土壌中で長期間生存して第一次伝染源になると考えられている。本菌は多犯性で大豆以外ではラッカセイ、インゲンマメ、アズキ、エンドウ、ルーピン、チャ、ツルマメ、アルファルファなどに寄生する。
茎疫病の病原菌は卵菌類に属するPhytophthora sojae である。本病は発芽間もない幼苗期から成熟期近くまで発生する。幼苗では胚軸部に水浸状の病斑を生じ、これが伸展、拡大し、やがて苗立枯れ症状となる。生育の進んだ株では根部や地際部、下位の分枝節を中心に楕円形や紡錘形の水浸状または褐色の病斑を生じる。病斑は伸展、拡大して茎の全周を覆い、根は褐変して根腐れ症状となる。病斑部には白色粉状の菌叢がみられる。罹病部に形成される卵胞子が土壌中で生残し第一次伝染源となる。本菌は大豆のみに強い病原性を示す菌である。
白絹病の病原菌は不完全菌類に属するSclerotium rolfsii である。本病は主に地際部の茎に発生する。地際部に白色の菌叢を生じ、地上部の生育が衰え、やがて枯死する。罹病部に粟粒状の菌核を形成し、これが土壌中に生残して第一次伝染源となる。本菌は宿主範囲が非常に広い多犯性の病原菌であり、トマト、ピーマン、アズキ、コンニャクなどを侵す。

対策

これらの立枯性病害はいずれも土壌伝染性で、菌核や卵胞子などの耐久器官が土壌中に生残して第一次伝染源となる。連作により病原菌密度は次第に高まるため、被害の発生する地域ではできるだけ連作を回避する必要がある。罹病した作物残渣は撤去して焼却する。また、菌核を含む土壌がトラクターなどの農業機械に付着して伝染する場合があるため、発病のみられた圃場で作業した場合は、洗浄を十分に行って土壌を洗い流し、未発病圃場への伝染を防ぐ。湛水状態にすると病原菌の菌核は死滅するため、田畑輪換は本病防除に有効である。土壌水分が高いと発病を助長するため圃場の排水性を改善する。病原菌の種類によっては、大豆以外の植物に寄生する多犯性のものがあるため、輪作に組み入れる作物種を非宿主作物にし、畦畔雑草の管理を適切に行う。茎疫病については、耕種的方法によっては防除が困難な場合、JAS 法認可の銅剤を散布する。立枯性病害に対し耐病性の高い品種には「タンレイ」、「スズユタカ」、「赤莢」、「コケシジロ」、「フクシロメ」などがある。

大豆畑
大豆畑

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