大豆の生理・生態的特性

大豆の生育

大豆の生育期間は極早生品種でも最低約120日が必要である。日本で栽培される大豆品種の多くは有限伸育型(登熟期に節数の増加が止まる)なので、生育期間の長短は開花までの長短と結実に要する期間の長短に由来する。大豆は短日性植物(短日条件下で花芽分化・開花が促進される) で、子実の生長や成熟も短日条件で促進される。しかし、感光性の強弱は品種によって異なり、長日条件下でも一定の温度に達すると開花する品種も存在するほか、両者の中間に位置する品種群もあり、感光性、感温性が多様である。

発芽・出芽

大豆の発芽を良好するには、一定の条件が必要になる。発芽の適温は30~35℃で、10 ~ 40℃の範囲で発芽率が高い。発芽日数は35℃前後では1~1.5 日程度であるが、10℃では10 日を要する。水分が適当であれば、播種から出芽までの日数は、73.7/(平均気温-1) で推定できるとされている。
大豆種子の発芽率は貯蔵中の子実水分量と温度による影響を強く受け、子実水分量18%の場合は14%以下(13.9%) に比べて、貯蔵温度10℃で1 年程度短く(2~3 年) なり、同-10℃では6~10 年未満で発芽率が低下する。
大豆の種子は、子実の水分が50%に達すると発芽を始める。この時、吸水による膨張が急激に起こると、長辺方向への膨張が短辺方向より長く続くことによって短辺方向に亀裂を生じ、組織の崩壊を招く場合がある。また、湛水下では発芽に要する呼吸が阻害されて発芽不良になることもある。このような発芽不良の要因は含水率の低い種子ほど影響が大きいので、予め緩やかに種子の含水率を15~16%に調整すること(調湿) が必要になる。
大豆は地上子葉型作物で、下胚軸が伸張して覆土を持ち上げるように出芽する。そのため、覆土が厚かったり、砕土が不十分であったり、降雨によって覆土表面にクラスト(土膜) が形成されても出芽不良となり、その影響はラッカセイやササゲに比べても大きいとされる。過湿土壌で大豆が発芽不良となる原因は、種子周辺の酸素不足が大きく影響している。酸素濃度を21%と5%に設定して大豆を発芽させ、その後に火山灰土壌を充填したポットに移植して栽培したところ、成熟期の大豆の地上部重、稔実莢重、粒重、粒数とも、酸素濃度5%で発芽させた大豆の方が劣っていた(農研センター 1997)。このように、発芽時の過湿による酸素不足は大豆の収量にまで影響するので、水はけの悪い圃場では排水性の改善を図る必要がある。
栄養生長期間は、播種から開花が終了するまで(概ね1番花の開花から1 カ月後までに相当)である。1番花開花までの日数は寒冷地では長く、温暖地では短くなるが、この期間の生育量が大きいほど開花数も多くなる。
大豆の子葉は、種子が地上に露出して展開したもので、子葉内のタンパク質や脂肪は順次消費されるが、子葉自体も2 ~ 3 週間は光合成を継続しており、タネバエや鳩害による脱落、欠損は初期生育に多少なりとも影響する。
子葉の次に展開する一対の単葉を初生葉と呼び、その着生節を初生葉節と呼ぶ。その上位節以降の節に発生する3葉の托葉が本葉であり、本葉節の葉腋に分枝が発生する。分枝の発生は栄養条件以上に光条件の影響が大きく、疎植にすると分枝の発生が増加し、密植にすると分枝の発生は少なくなる。
大豆の主茎は、収穫期には30~90cm に達する。主茎の成長には10℃以上の気温が必要で、25~30℃で最も旺盛になる。成長は長日下で顕著なため、暖地等で早播き過ぎるとつる化する場合がある。出葉速度は20℃以下で低下し、生育初期は概ね0.1~02 葉/ 日、5 葉期以降は0.3 葉/ 日程度と言われている。
乾物同化量は、1番花開花以前は小さいが(全体の1/3~1/4 程度)、それ以降、開花が終了するまでの約1 ヵ月間に急激に増加して最大になるので、この間の養水分や日照、温度等の条件が特に重要になる。

根の発育

大豆の根系は、主根と主根から分枝した岐根(2次、3 次根) からなる樹枝状根系である。2 次根は胚軸や地上部の節からも発生する。また、胚軸からは不定根の発生が見られ、培土した土壌中や空気湿度90%以上の空気中など多湿条件下で発生が増加する。
根の生長は25~30℃で最も旺盛になり、総根長は3.5 ㎞ / 株(大型ポットでの結果) に達すると言われている(農林統計協会2002a)。根の伸張や根群の発達には施肥のほか、地下水位が大きく関与している。地下水位が40cm 程度の場合は直根が垂直方向に深く張り、根群は深部まで広く展開するようになるが、地下水位が高い(10cm程度) 場合は直根が深く張らずに、岐根が地表浅く水平方向に発達するため、干湿の影響を受けやすくなる。また、施肥量が多い場合は岐根の発生が少なくなり、根粒菌の着粒数も減少するようになる。

根粒菌の着生と活性

大豆に着生する根粒菌はBradyrhizobium 属の土壌細菌であり、大豆根に着生して共生関係をつくり、大豆が光合成によって生産した糖(リンゴ酸) をエネルギー源として空気中の窒素ガスをアンモニアや窒素化合物として固定し、大豆に供給している。大豆は単位面積当たりで水稲の約2倍の窒素を必要としているが、根粒菌が空気中の窒素を固定する量は気象条件や土壌条件などにより大きく異なり、平均的には概ね50%程度の供給に及ぶとされている。
根粒菌は好気性菌で、根粒内での生育にも多量の酸素を必要とする。土壌中の酸素分圧が20%以下に低下すると、窒素固定が阻害され、同じく10%では完全に停止する。このため、土壌孔隙が小さい粘土質の土壌で着生が少なくなるほか、湛水圃場では大豆より先に根粒菌が湿害を受けて脱粒をしたり、枯死をする。
しかし、土着化した根粒菌の密度は湛水条件下でも低下しない(早野1991) ので、大豆作付け履歴を持つ圃場では、接種効果は判然としない。一方、新墾地では土着の根粒菌密度が低く、根粒菌接種が有効とされる。また、化成肥料等の多施肥によって土壌中の硝酸態窒素濃度が高い場合は根粒の着生が少なくなり、反対に炭素系(草質) の完熟堆肥を施用すると根粒菌が増えることが指摘されている。
根粒菌の着生は比較的早い段階から見られ、活性の高い根粒は、割って見ると根粒内部が濃いピンク色をしている。内部が白色化している場合は活性が低く、空洞化している場合は死滅している。大豆の根に着生する根粒数は開花期以降に増大するため、中耕・培土による土壌物理性の改善は、根粒の窒素固定活性を維持するためにも重要である。また、根粒の活性のためには、降雨や畦間灌漑等による湛水が半日程度で引くような圃場でなくてはならない。
他方、根粒菌による窒素の供給は莢伸長期から急速に低下するので、開花期以降の窒吸収を意識した土づくりや追肥を行うことが単収を上げるためには必要である。

受精・結莢と子実の肥大・登熟

播種後40 日前後で1番花の開花・受粉が始まり、同一株では順次開花が起こるので、開花期間はおよそ3~4 週間で、6 週間に及ぶ場合もある。ただし、成熟莢になる割合は総開花数の30~50%ほどで、比較的早期に開花した花ほど高く、その他は落花する。
花芽分化には15℃以上の温度が必要で、25℃前後までは温度が高いほど促進される。また、短日日数が長いほど進み、長日条件下では開花までの日数が長くなる。
大豆は自花受粉植物で、開花はほぼ午前中(6時~10 時頃) に行われるが、受粉は開花前にほぼ終了しており、開花時には幼胚の形成が始まっている。そのため、自然交雑は0.5~1%以下であるが、銘柄維持のためには数年に1回の種子更新が必要とされているので、自家採種の種子を使用する場合は注意する。
なお大豆は、感温性(高温で花芽分化) の夏大豆(主に早生種) と、感光性(短日条件で花芽分化) の秋大豆(同晩生種) に大別され、近年栄養生長期間が短く、登熟期間が長い中間型品種が増加している。
結莢には開花以降の栄養状態の影響が大きく、特に登熟初期に水分不足になると落莢を多くする原因になる。圃場の乾燥が続いて、大豆の葉が内側にまくようになると水分不足の兆候で、干害の危険があるため速やかに灌水などの措置を要する。このほか、結莢率は群落内の光合成が低下するような過繁茂状態や日照不足、低温、高温などの気象環境や、窒素、石灰等の土壌養分不足によっても低下する。
開花から登熟初期の水分不足は、光合成を低下させるので莢数が減少するが、後期に水分不足になると粒重が低下する。登熟後期の適温は、日昼25℃、夜間15℃前後であり、高温では脂肪やタンパク質の含有率が、低温では炭水化物の含有率が上昇する。この時期、長日条件では葉の老化が進まず、莢先熟になりやすい。生育が順調に進めば、発芽から90 日頃には葉の黄化・落葉が始まり、100~110 日程度で収穫期を迎える。

生育障害

大豆は気象条件によって種々の生育障害を受けることがある。大豆の冷害は北海道から東北北部において、6 月下旬~8 月下旬に平均気温18℃以下の日が続くと被害が大きくなる。
冷害の種類は、主に低温に遭遇する生育ステージによって、ⅰ)栄養生長期に低温寡照が続いて生育量が小さくなることによる減収(生育不良型)、ⅱ)開花始め頃~開花10 日目頃に低温に遭遇することによって花粉機能は低下し、受精不良から落花、落莢、不稔が増加して減収(障害型)、ⅲ)低温で開花・登熟が遅れて子実の肥大が不良もしくは霜害に遭遇して減収(遅延型) の3 タイプに分類される。
干害は、登熟期が高温(30℃以上) ・寡雨で経過すると、養水分の吸収阻害や根粒菌の活性低下によって結莢率が低下し、子実の肥大が不良になり発生する。平成22 年度(平年差+1.64℃、1898 年以降の最高記録を更新) を例にとると、「高温のみが原因となる障害の報告はなく、むしろ開花期以降の干ばつが原因と考えられる青立ち、落花・落莢、小粒化、裂皮等の生育不良や害虫多発」が報告されている(農林水産省2012)。なお、同レポートでは青立ち等生育不良障害の抑制に畝間灌水が有効であると述べており、畝間灌水を行う場合は半日程度で排水ができるように排水路等を確保しておく必要がある。
一方、圃場の冠水期間は1 日程度なら問題はないが、数日間にわたって冠水すると、根の腐敗や根粒菌の脱落などの湿害が発生する。湿害は排水条件が悪い圃場で、台風通過や秋雨による長雨時に発生がするので、注意が必要である。
九州など台風常襲地域では、台風による茎葉の傷害や倒伏が問題になり、栄養成長期の傷害は回復可能であるが、着莢期以降の傷害は回復せず、茎葉の脱落、莢の不稔、倒伏等によって大きく減収する。さらに、大豆は土壌中の塩分濃度が0.03%以上になると障害を受け、0.125%以上では生育できなくなる。このため、沿岸部等で台風によって巻き上げられた潮風を受けやすい地域では注意が必要である。

大豆の収量構成

大豆の収量をイネと同様に構成要素で表すと、次式のようになる。
面積当たり子実収量 = 面積当たり株数 × 株当り節数 × 節当たり莢数 × 莢当たり粒数 × 精粒率(%)× 1粒重
(注) 「ダイズ安定多収の革新技術」有原丈二(2007 農文協) を参考に一部改変
このうち、莢当たり粒数や1粒重は、栽培の影響もあるが品種によってほぼ決まっているため、多くの場合、収量は面積当たり節数と節当たり着莢数によって増減することになる。有機栽培においてはカメムシやマメシンクイガによる被害粒の発生もあるので、精粒率を軽視することはできない。
面積当たり節数は、出葉速度と関係するので、温暖地では有機栽培と慣行栽培の差が出にくく、寒地では有機栽培でやや少なくなる傾向がある。そこで、寒地では追肥の時期を早めるなどの対策が必要になる。
面積当たり莢数は、株当たり節数以上に面積当たり株数の影響が大きいので、有機栽培でも栽植密度の検討と発芽・苗立ちの確保が重要な課題になると言える。
有機栽培での栽植密度は、慣行栽培以上に地域の気象や土壌条件の影響を受けやすいとみられる。近年に育成された大豆品種は分枝の発生が少ない密植型であるため、病害虫の発生を警戒した疎植栽培や遅蒔きでは莢数不足による収量低下が懸念される。一方過度の密植は、開花期以降に過繁茂になって莢数が減少したり病害虫の発生を誘発する場合があり、注意が必要である。
有機栽培における適正な栽植密度の検討例はほとんどなく、まずは地域の慣行栽培に準じて、播種時期に応じた栽植密度で播種してみることが必要である。なお、有機栽培例では在来種系の品種を利用している場合もあるが、在来品種は分枝の発生が旺盛なので、相応の疎植を行うように留意する必要がある。

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