中間地における有機大豆作技術2

中間地における有機大豆作の留意点

品種と作付時期の選択

有機栽培を安定して行っていくため、営農条件に合った品種と播種時期を選択する。

品種の選択

地域の奨励品種の中から選択する

現状では、有機栽培向きの品種が育成されているわけではないので、地域に適するとして県が示している奨励品種の中から選択することが現実的である。これら奨励品種の品種特性情報は各県の栽培技術指導指針の中で示されているので役に立つが、有機栽培農家が近くにいれば、栽培しやすい品種情報を交換しあって選択をする。奨励品種の中には、準奨励、推奨、特定等の名称を用いて地域性や特定用途向けの品種も含まれている場合もあるので、試作も行いながら適応性を検討する。
大規模な作付けにより広域流通を目指す場合は、近年育成された品種には色々な栽培適性(病害虫抵抗性、温暖化対応性、機械適応性など)を持った品種があるので、奨励品種の情報は役に立つ。

地域の在来品種から選択する

有機大豆作農家では、在来品種を栽培しているケースも多い。在来品種は、奨励品種に比べ生産力は低く、コンバイン刈り適性は低いとされているが、化学合成された農薬や肥料の出現前から存在した品種であるため、少ない養分でも育ち(少肥性)、病害虫にも強いとも言われている。
また、固有の特性を持っている場合が多く、その特性に価値を認めて選択していることが多い。中間地における在来品種の例としては、栃木在来(栃木県)、八郷在来ふくめ(茨城)、おがわ青山在来(埼玉県)、小糸在来(千葉県)、津久井在来(神奈川県)、さとういらず(新潟県)、ミズクグリ(滋賀県) などがある。
ただし、在来品種は地域適応性が強いので、試作を行いながら慎重に選ぶ必要がある。また、予め販売先のメドを付けてからにしないと、在庫を抱え込むことになるので留意する。

作付時期の選択

中間地の有機大豆作は、ほとんどが1年2作または2年3作体系の一環として行われているので、その作型の前作の作物の収穫期との関係で作付時期が決められる。
大豆の播種時期は、原則として奨励品種の特性表に示されている時期を選択する。有機栽培の場合でも、県の栽培指針等による慣行栽培と同じ作付時期を選択した方が、播種から開花期(栄養成長期) までに十分な生育が確保でき、開花から登熟までの期間(生殖生長期) が十分とれるので、本来はその方が生産力は高い。従って、病虫害や雑草害が回避できるのであれば、慣行栽培と同じ時期の播種期が望ましい。
しかし、現実には、有機栽培農家の多くが慣行栽培よりも遅い作付時期を選択している。それには2つの理由がある。

病虫害及び雑草害を回避のための遅播き

慣行栽培より播種時期を遅らせて、意識的に雑草の繁茂期を回避し、害虫の多発時期を過ぎてから開花結実期を迎えるようにしており、多少単収が落ちても安定した栽培ができるとしている。
ただし、在来品種でも晩生種の場合には、遅く播種すると収穫期が降霜や降雪により被害を受ける例もあるので、品種特性の見極めが必要である。

前作との関係での遅播き

中間地の有機大豆作農家は、裏作として小麦を栽培していることが多い。このため、小麦の収穫期との関係で、大豆の播種期を遅くらせざるを得ないという事情もある。県の栽培指導指針でも作付体系に応じた播種時期は示されているが、それよりも、さらに意識して遅播きにする狙いは、やはり病虫害及び雑草害の回避である。この場合、播種時期を遅らせれば生育量が確保できず減収につながるので、土づくりや播種量の増加などで対応する必要がある。

土づくりと施肥管理

土づくり対策

地力を活かす有機大豆作

大豆は地力収奪力が大きく、窒素の大部分を根粒菌による窒素固定と土壌からの地力窒素に依存するとされ、土づくりが不十分な圃場では単収が低い。大豆の初期生育は緩慢であるが、開花期前後から急速に生長し、養分吸収も開花期から莢伸長期にかけて旺盛となるため、これを賄うために土づくりが重視される。
中間地の有機大豆作農家の多くは、1年2作または2年3作の体系をとっており、大豆播種時に麦類などの茎葉の同時鋤込みを行うか、機械装備との関係で茎葉を鋤込む時間的余裕がない場合には、圃場から茎葉を持ち出し1年かけて完熟堆肥として、大豆あとの麦作に施用するなどの対応が図られている。
石川県農業試験場(北田ら1988) では、転換畑(灰色低地土) で5年間にわたる「大豆連作」や「大豆-小麦輪作体系」と、有機物の連用などを組み合せた総合的な研究を行ったが、土づくりに関連して多くの示唆が得られた。その報告では、有機物の連用により、ⅰ)大豆の着莢数と百粒重が増加し、増収に結びついた、ⅱ)大豆連作圃場では増収傾向にあった、ⅲ)表層土壌の粗孔隙率が増加し、団粒構造が発達した、ⅳ)根重及び根粒着生数が増加したことなどを指摘している。
なお、埼玉県下のS氏は、同一普通畑において10年以上「大豆-小麦体系」による連作を継続しているが、堆肥や肥料を施用することなく、それぞれの作物残渣の鋤込みだけで、特殊な気象年を除き200kg/10a以上の単収をあげている。慣行栽培では連作は3年目以降は大きく減収するとされているが、地力を活かすことが重視される大豆の有機栽培技術については、今後生態的な環境変化と生産力との関係も含めた視点からの解明が必要と言える。

新規に有機大豆作を開始する際の対応

先駆的な有機大豆作農家によれば、新たに有機大豆作を始める場合や、有機大豆作の規模拡大を図る場合には、3年程度は年間3トン/10a程度の畜糞堆肥を投入して土づくりを行い、その後は作物の茎葉を鋤込んだり、土壌分析結果を参考にして、必要に応じて土壌酸度の矯正(pH6.0~6.5を目標とする) やリン酸分の補給を行ってから開始すると、安定した生産が可能になると指摘し
ている。

施肥管理

中間地の有機大豆作事例調査農家では、長年にわたる地力づくりを行っているとして、元肥を施用している例はなかった。毎年の各作物の茎葉の鋤込みで土づくりが出来ており、根粒菌の働きや土壌中の地力窒素でじっくり育てた方が、病害虫を寄せつけないという指摘が多かった。また、元肥に窒素を施用すると根粒菌が働かなくなるので、前作に草質の完熟堆肥を施し根粒菌を活性化させているとしている農家もあった。
一方、根粒菌による窒素供給に依存した生育は莢伸長期頃から急速に衰えるため、指導機関の生産指導指針では開花期以降の窒素補給を図る追肥を勧めている。有機栽培農家では、通常追肥は行っていないが、地力が低い圃場、播種前に堆肥や元肥を施さない圃場、連作圃場では開花期の追肥を行うことが望ましい。
早くから大豆等普通作物の有機栽培の指導・啓発に力を入れてきた栃木県農業試験場では、「稲・麦・大豆有機農業経営データvol.Ⅲ(2011)」の中で、開花期に発酵肥料を30~40 ㎏ /10a施用するモデル例を掲示(栃木県HP) している(本サイトでは、稲・麦・大豆の有機農業経営データも公表しており、参考になることが多い)。
大豆への追肥効果については、栃木県のT氏の無肥料栽培圃場(普通畑) で試行的に行った追肥調査(品種:在来種「サトウイラズ」、7月11日播種、開花初期(8月9日)の有機質肥料による窒素追肥量7kg/10a)でも、無追肥区(単収105kg/10a)に比べ追肥区は147kgへと4割の増収効果があった。圃場条件毎の施肥量や施肥時期については、研究例がないので今後の検討課題である。

播種

播種時期

中間地の有機大豆作では、雑草及び害虫回避の視点から、播種時期を遅らせている事例が多い。
例えば、埼玉県平坦部の大豆の慣行栽培の播種期は6月20日前後、成熟期は10月15日前後であるが、この基準で播種すると害虫や雑草の勢いに圧倒され栽培が困難とのことである。
なお、播種期については、一定期間以上遅くなると、播種量を増やして茎数や莢数を確保しようとしても減収になるので、栽培の安定性と収量確保との兼ね合いを考慮し、品種特性や収穫晩限期との関係も含めての判断が必要である。これは、大豆が短日植物であり、1日の日照時間が14時間以下になると花芽形成を始めるとされることと関係している。

播種方式

小規模な有機栽培農家ではロータリーカルチで耕しながら、その後ろに2条播き程度の播種機を装着して播種をしており、通常は平畝栽培が行われている。一般的な例では、畝幅は65~70cm、株間は10~25cm、2粒播きで行われている。大規模な作付農家では大型播種機が使われている。
一方、圃場の排水条件が悪く、重粘土壌の圃場では、畝立栽培を行うと生産が安定するとされているが、今のところ普及率は低い。

播種密度

一般に、栽植密度が同じであれば、畝幅が狭い方が増収し、茎葉が畝間を早く覆うので雑草が少なくなる。中耕・培土の管理作業により畝幅は決まるので、播種量は株間で調節する。
10a当り11000~15000株の播種量を基本として、麦跡で遅まきになる場合はこれよりも密播する必要がある。
一般に、播種深度は3、4cmとするが、覆土が深いと発芽率が低下し初期生育が抑えられる。土壌水分が十分あれば覆土は浅く、乾燥していれば深くしたり鎮圧を行う。
10a当り播種量は県の栽培指針を基準にして考えるとよいが、在来種の場合には開張性が高い品種が多いことからやや減じ、小麦など前作の関係で播種時期が遅れるに従い播種量を増やす必要がある。各県の慣行栽培の指針でも、地帯別や播種期別の基準となる播種量が示されているので参考にするとよい。

雑草防除対策

高単収を上げている有機栽培農家の最大の要因は、雑草防除に成功していることである。それら農家に共通している対策は、以下の通りである。

排水条件を改善し発芽・苗立ちを良くしている

転作田での有機栽培農家の一致した雑草対策の基本は、発芽・苗立ちを良くすることである。これは、大豆の生育が揃っていれば、発芽後30~40日間程の間は中耕・培土によって雑草を抑制することにより、やがて茎葉の生長による被陰力により雑草は成長力を失うからである。
大豆の発芽・苗立ち不良は、転作田の場合には湿害によることが多い。そのため、まずは圃場の排水条件を整えることから始める。平坦な水田地帯では地下水位が高く個別の圃場のみの対策では思うようにいかないことが多いが、埼玉県小川町S集落では地域ぐるみのブロックローテーションにより、有機大豆作の集団転作を行い排水条件を改善し、また、畑雑草の少ない状態でスタートして成果を上げている。

適切な中耕・培土により雑草を抑制する

中耕・培土は土壌の通気性を高め、発根を促して生育を促進し、また、降雨や台風等に備え圃場の排水性を高め、倒伏も防止するという、いくつもの目的を持っている。しかし、有機栽培にとっての中耕・培土の最大の目的は雑草防除にある。通常は圃場が乾燥している時をねらい、開花する前までに2回程度ロータリーカルチを使った中耕を行う。
特に、最初の中耕時期のタイミングが重要で、雑草が発芽してから3cm程度の時期に、地表面を浅く耕して、乾燥した圃場面で雑草を枯らすことが大事である。中耕直後に降雨があれば雑草は再び根付くので、天候条件にも留意する。
は集落全体の水田畑利用を、ブロックローテーション方式による田畑輪換によって、毎年計画的に作付場所を変え、水田雑草と畑雑草もコントロールしている集団的土地利用地区の例である。有機大豆を使用する食品企業との契約で、品種も統一されており、耕種基準もほぼ同一であるが、雑草の繁茂状況は農家毎に大きく異なっている。品種も耕作法もほぼ同じような条件でも、抑草作業の良否とタイミングで収量にも大差が出ている。
中耕・培土の仕上げでは、培土による畝立てを意識して行う。株間の雑草を土で覆うとともに、転作水田では培土を通じて地表排水を円滑にするねらいがある。ただし、コンバイン収穫を行う場合には、畝の高さは20cm(重粘土壌でもない限り、刈取り時には15cm位になる。在来種では着莢位置が低いので、コンバイン収穫の場合にはさらに5cm程度低い方がよい)程度に留めておく方がよい。

手取り除草を実施する

中耕・培土を行う場合でも、株周りの雑草は完全に除去できないので、有機栽培で高単収を上げている農家は、程度の差はあるが人手による除草を行っている。近年、海外から輸入された飼料穀物に混入して家畜堆肥から広まっている強害雑草(アメリカセンダングサ、アサガオ類など) が問題視されているが、コンバイン収穫での汚粒防止対策としても人力での除去は必要である。なお、転作田ではヒエも含めて雑草が繁茂することもあるので注意する。

灌水

土壌条件や地下水位にもよるが、関東では開花期以降に長期間降雨がないことが多くなっている。干ばつにより、葉が萎れ、落花・落莢が多くなり、着粒数の減少と小粒化によって大きく減収する。2010 年に埼玉県下では干ばつ等により半作以下の所が多かった。大豆は生育中期以降に水分の要求量が急速に増す。特に、生育が旺盛な開花後は水稲より多くの水分を必要とされている。そこで、転作田で水田用水の利用が可能であれば、開花期から結莢期の干ばつ時には畝間灌漑を行う。
灌水開始期の目安は、開花期以降に晴天が1週間以上続き、土が白く乾き、日中葉が萎れ反転するようになった時期である。ただし、中途半端な灌水は、かえって植物体自身の吸水能力を妨げ、灌水量が少ないと植物の生育力を低下させるので、一旦灌水を始めたら干ばつが終わるまで継続する必要がある。
一般に、有機栽培農家では、土づくりにより土壌の保水性、団粒性を高める努力をしている場合が多く、根が深く入っている傾向があり、干ばつ耐性は高いとされている。

病害虫対策

雑草が繁茂すると紫斑病の発生が多くなり、カメムシやマメシンクイガなどの被害も増加する。
しかし、有機大豆作農家からは、害虫も病気も発生はするが、有益昆虫や動物が増えるなど、圃場生態系の変化でその被害はあまり気にならない程度との指摘が多かった。
埼玉県神川町のS農家は、10年以上連続して同一の畑で「大豆―小麦」体系の作付けを行い240kg/10a前後の単収を上げている。有機栽培開始当初は甚大な虫害を受けていたが、3、4年目からは問題がなくなったとしている。また、有機栽培圃場の隣接地で新規に有機大豆作を行っても、その圃場だけは、当初虫害がひどいとしており、そのメカニズムについては今後の研究課題と言える。
一方、小規模な作付地、周辺に野菜産地や山林原野が点在しているような地域では、ハスモンヨトウやカメムシが猛威をふるう地域もある。ハスモンヨトウに対しては有機JAS規格で許容されているBT剤を利用している例もあるが、価格が高いことや周辺農家から農薬を散布していると見られることを嫌い、使用例は少ない。
小規模な大豆作付地では、一旦害虫が大発生すると壊滅的な被害を被るが、ハスモンヨトウ被害が激発する地帯で、やむをえず防虫ネットを利用して被害を回避している例がある。

事例紹介

在来種で高単収を上げる有機大豆作 -成果を上げる田畑輪換と万全な雑草管理-

大豆作の概要

大豆の品種は2000 年から地域ぐるみで「おがわ青山在来」(晩生種)を栽培している。この品種の固定度は低く、開帳性が強く、着莢位置が低くて(調査例では、同町産「エンレイ」の最下位分枝位置までの高さ9.2cm に対し、5.7cm)、脱粒性もあり、コンバイン収穫適性は低いが、甘みが強く(調査例では、同町産「エンレイ」の糖度8.3%に対し、12.5度) 豆腐等の加工に適し、少肥性であることも有機農業向きである。
大豆の播種は、慣行栽培品種の6月中旬播きに対し、7月上~中旬の遅播きとし、雑草や病害虫を回避している。播種密度は畝間80cm、株間27cmに2粒播きで(播種量は4kg/10a)、播種深度は3cmを基準としている。
大豆の収穫期は、慣行栽培より1カ月以上遅い11月下旬~12月上旬である。単収は坪刈り収量では2年連続260kg/10aを超えているが、脱粒性が高い品種のため、コンバイン刈りロスが多く実収高では200kg/10a程度となる。落下大豆は後作水稲の肥料となるほか、雑草抑制にも役立っているとみている。
大豆の販売価格は500 円/kgである(加工企業側は有機栽培への取組段階により順次引き上げる方式としており、最初は300円/kgが出発点としている)。

排水・土づくり・施肥対策

地域の水田は褐色低地土であり、水田の日減水深は30mm/日程度で排水は良い。また、集落全体でブロックローテーション方式で、毎年大豆作付地を変更しており(2年水稲-1年大豆の田畑輪換)、地域排水が良くなる上に、前作が2年稲作のため畑雑草が減少するという効果もある。安定多収は土づくりが基本であるが、長年にわたる2年3作の土地利用と、前作の小麦には土壌微生物の働きを活性化させるため、1年間発酵させた枝葉チップ堆肥を施用しており、大豆には元肥も追肥も施用しないが安定した収量を上げている。また、前作の小麦の株の状況で地力を判断し、地力が高い圃場からは麦わらも持ち出している。これでも慣行栽培の大豆単収をはるかに上回っており、土づくりが根粒菌や土壌微生物、菌根菌の働きに良い影響を与えているとみている。

雑草対策

田畑輪換により畑雑草が少ないことに加え、播種前のていねいな耕耘・砕土により雑草の発芽抑制が図られ、大豆の発芽・苗立ちをよくしている。特に留意していることは、大豆の播種前にはロータリー耕耘を行い、その後ドライブハローをかけ、さらにロータリー掛けを行いつつ播種をしており、この3回にわたる耕耘・砕土で発芽・苗立ちを良好にしている。
また、本葉が2~3枚出た頃(7月中旬) にカルチベーターで中耕し、草丈が20~30cm頃に2回目の中耕を根への酸素供給を兼ねて行い(8月下旬)、株周りの雑草を人力でタイミングよく除去することにより、大豆の枝葉が旺盛になり、その後の雑草の発生を抑えている。

病害虫対策

遅植えで病害虫が少ない時期に栽培している。カメムシは若干出るが、大減収にはならない。マメハンミョウは大発生したことはあるが、集落全体への有機農業の広がりから地域の生物多様性が高まり、害虫は出てはいるが被害は少ないという状況である。また、ヨトウムシには緑きょう病、ノゼマ病や核多角体ウイルスが感染して抑制されるほか、種々の蛙が働いて被害を防いでいる。

長期連作による有機大豆・小麦作 -遅播きと雑草制御で安定多収生産-

経営概況

埼玉県秩父に近い群馬県につらなる山麓部に位置し、標高は150m前後で、日当たりはよい。経営耕地は畑500a(うち借地440a)、水田4aで、主要な労働力は1名、野菜の収穫期にパートを雇用している。
作付作物は大豆が350a(うち有機JAS 対象200a)で、小麦(200a)、タマネギ(40a)、ジャガイモ(30a)、ネギ(10a)、サトイモ(10a)は、全て有機JAS認証を受けている。大豆、小麦は全量を味噌、醤油、豆腐向け原料として、地域のこだわり食品企業Y社に出荷し、野菜の半分は直売店向け、半分は宅配向けとしている。
有機栽培は1995年に近くのY社側から原料用有機大豆の生産を要請されたことから、仲間10人と一緒に栽培を始めた。しかし、当初害虫と雑草がひどく3年位で皆栽培をやめた。その時、Y社社長から自然農法実践者を紹介され、技術を学んだ。
加工品向け価格の60kg当たり価格は、生産費を考慮し、大豆は交付金等の1.5万円+有機加算額8千円(1等級の場合)、小麦は1万円+有機加算金9千円(2等級の場合) となっている。

大豆の栽培概要

品種は大豆交付金を受けるため、奨励品種から栽培しやすい品種を選択している。2011年は「タチナガハ」と「エンレイ」を栽培した。品種数はコンバインタンク掃除、乾燥調製での異品種混入防止の観点から(JAによる大豆交付金検査を円滑にするため)、数を絞っている。「タチナガハ」(播種7月6日) は、脱粒性が低く着莢位置が高いので、コンバイン収穫向きである。「エンレイ」(播種期は都合で遅れ7月20日) は、着莢位置が低く脱粒性があり、コンバイン収穫には適さないが、成分的に豆腐向きである。
品種変更による連作対応も考え、栽培適性を見るため、時折色々な品種を栽培する。在来種の「借金なし」は、作りやすく単収は3割ほど多いが、味噌にした際に豆の筋が残るため、加工企業からは嫌われる。種子は毎年1/4はJAから、残りは自家採種である。
大豆は小麦、ジャガイモ、タマネギの後に作付けする。「大豆-小麦」の連作は10年以上続けている圃場が多いが、作柄は安定している。
播種期は、慣行栽培では6月上旬播きであるが、草丈ばかり伸びて青立ちし、収量は上がらない。そこで通常、小麦を6月15~ 20日頃までに収穫したあと、6月30日頃までにロータリーで耕起し、大豆の播種は7月10日前後にしている。播種はロータリー耕後、乗用2条型播種機(ロータリーの後に装着)で、畝幅70cm、株間10cm前後(播種間隔は5cm刻みでセット)で、1~2粒づつ播種している。播種の深さは、乾燥気味の時は5cm位に、降雨直後は浅くしている。
大豆の単収は年次、圃場間差はあるが100~300kg/10a(平均的には240kg/10a)である。
2010年産は高温障害で鞘落ちし、100kg/10a程であったが、2011年産は180kg/10aであった。コンバイン収穫は、汚染粒が出ないように、大豆がパチパチはじけるくらいまで置いてから行う。落下ロスは多いが、後作小麦の良い肥料になると聞き、気にしなくなった。現実に新規畑で大豆を栽培しても穫れないが、大豆跡小麦や、その後大豆を栽培した圃場では、非作付圃場に比べ2、3割増収になる。2011年の収穫は11月15日~20日で、直後に小麦を播種した。

排水・土づくり・施肥管理対策

緩傾斜畑のため排水条件はよい。土壌は石まじりの砂壌土の所から、重粘土の所まで場所により様々である。作土深は20cm程である。
10年以上「大豆―小麦」の連作を続け、堆肥は施用していないが、大豆、小麦の茎葉はすべて圃場に還元し、ロータリー耕で鋤込んでいる。野菜にはおからや屑大豆を施しているので、そのあとの大豆の単収は小麦後のものより多い。

雑草対策

播種時期を6月下旬播種から7月上・中旬に変えてから雑草の発生が大幅に減った。また、かなりの密植栽培(10a当たり播種量は6kg)であるが、この方が草丈も伸び、日陰が早くから出来るため株元からの雑草が減っていい。除草対策としては、発芽揃いを良くした上で、ロタリーカルチ(1条タイプ)で中耕を2回行っている。1回目は中耕のみであるが、2回目の中耕は培土も兼ねて行う。
さらに、3年に1回は播種前にプラウ耕を行ったあと、ロータリーがけを行うが、雑草が多い時にも行う(以前は1年に1回耕起をしていたが、雑草が減ってきたので回数を減じている)。プラウ耕は雑草を深い位置に埋められるし、雑草の発芽がゆっくりになる。この作業は、秋の大豆収穫と小麦播種の間が短いので、余裕が持てる麦刈後に行うことが多い。

病害虫対策等

有機栽培を開始後の3年間は、連作で収量が大幅に落ち、かなり害虫が出た。連作により3年間我慢し収量が落ちても除草対策をやっていれば、4年目くらいから虫が出なくなり、収量も回復してくる。 新規の圃場で大豆を栽培すると害虫が発生して、青立ちするが、2年目からは減り、長く続けていると害虫はほとんど出ない。すぐ隣で有機栽培を始めると、その圃場だけは害虫が大発生するが、3年位であまり出なくなる。葉は多少害虫に喰われても収量が減るわけでなく問題はない。有機大豆作開始当初は雑草害だけでなく、播種が早すぎたため鳩害がひどかった。しかし、鳩害は大豆の遅植えで大幅に減った。小麦の収穫が始まると、鳩はそちらの方にも行くし、地域の有機大豆作面積が5haと増加したため、鳩害は分散され全く問題がなくなった。

条件不利地域での大規模有機大豆作 -重粘土壌の排水不良対策に注力-

経営概要

石川県河北潟干拓地の低平平坦な重粘土壌の排水不良地の悪条件を克復し、気候条件的には限界地である「大豆-麦類」の作付体系を実現している。I氏は、有機農産物を加工販売するK株式会社と、耕作放棄地を開発するO農業生産法人を連携した形で複合的に経営し、農商工連携型経営を展開している。
1997年に脱サラして家業の農業に就農し、当初から有機農業を志向して耕作放棄地を主体に経営規模を拡大し、個別経営体の経営耕地は水田が約30ha、畑が約150haで、全耕地の8割は借地である。平成22年の作物は大豆150ha、大麦88ha、小麦77ha、水稲35ha他で、特別栽培米20ha分を除き全て有機JAS認定を取得している。河北潟干拓地の大豆、麦類は転作物扱いとはならず収益面では厳しいため、生産物の8割はI氏経営の自社加工製品(商品アイテム数は110)向けの原料とし、残りは有機農産物を求める企業、消費者に生産コストに見合う価格(大豆の場合400円/kg程度) で頒布している。

大豆の栽培概要

大豆は河北潟干拓地の約150haで長期間連作し、品種は後作の麦類の作付けと加工適性を考慮し早生種で高タンパクの「あやこがね」を栽培している。
大豆の播種は前作が大麦(88ha、播種10月5日~ 12月5日、収穫6月10日~7月上旬)跡の圃場では6月15日から7月上旬に、小麦(播種11月上旬~12月10日、収穫6月中旬~7月上旬)跡の圃場では6月中旬から7月中旬に行う。
播種の基準は畝幅70cm、株間3~4cm、播種深度は2~3cmである。播種期が遅いほど厚播きにし播種量は8~12kg/10a程度である。大豆の収穫期は10月5日頃から11月20日頃にかけて行い、刈取りが終わった圃場から順次麦類の播種を行う。大豆の作付規模が大きいために栽培適期を外れる圃場が多く、降雨で雑草抑制のための中耕培土が適期に行えないことから、平均単収は90kg/10a程度である。極端な重粘土壌のため、播種後に豪雨に遭うと土膜(クラスト) ができて発芽が極端に悪く、また、降雨との関係で除草のタイミングを外せば収穫皆無の圃場がある一方で、気象に恵まれ発芽及び雑草抑制がうまくいけば300kg/10a程の圃場もある。

排水・土づくり・施肥対策

米の生産調整に伴い干拓地では畑作物しか作付できない中で、長年にわたり大豆-麦類の1年2作体系を継続してきた。重粘土壌の物理性改善(腐植増加による団粒化促進や保肥力増大)のため、親の代から30 年間有機質資材の投入を継続してきた。
15年前に就農し有機栽培を始めた当初(経営規模30ha)は、大豆の元肥として牛糞堆肥や魚粉を施用していたが、近年地力が高まり、規模拡大による資材確保、労働競合等から大豆への元肥は止めた。前作の麦類へは播種前に自家製発酵籾殻鶏糞堆肥(成分は窒素2%、リン酸6%、加里4%) を施用している。

雑草対策

重粘土壌のため雑草抑制が最大の課題である。強害雑草は以前からのアメリカセンダングサ、悪ナスビ、ケイトウに加え、最近は雑草の種類が変化しつつあり、3,4年前から深い位置から発生する「おなもみ」「いちび」が増加している。作付規模が大きく播種優先のため雑草の抑制は十分ではない。
雑草対策として過去に不耕紀栽培、マルチシーディング方式(ヨーロッパで実施されている麦わらの畝間への撒布によるマルチ)、麦立毛間播種方式、狭畝密植栽培方式を試行してきたがうまく行かなかった。現時点での方法は、まず播種前に3回ほど浅いロータリー耕起を行い、表土にある雑草の発芽を促した後、これを徹底的に排除して無くし、大豆の発芽時の雑草の発芽を無くすように努めている。
大豆播種後はロータリーカルチによる中耕培土を原則として5回行う。播種後約4日で大豆は発芽するが、2葉目が少し出た頃(発芽後10~14日後) に1回目の中耕を行い、以後開花期までに2回と、開花後にも2回の中耕培土を行う。開花期以降の中耕・培土は大豆にダメージを与え花落ちすることもある。河北潟の重粘土は地下水位が高く保湿性が高く夏の乾燥期には硬いゴロゴロの土塊となり十分な培土がでない。このため、5回目の培土でも土が株元までかかりにくく、完全な雑草抑制は出来ない(砕土が細かく出来る開発地の畑では3回の中耕培土で完全な除草が可能)。なお、重粘土壌の砕土率を上げるため播種前の耕耘は、プラウ耕⇒デイスクハロー耕⇒ロータリー耕を組み合せている。収穫時に障害になる雑草は直前に手で取っている。

病害虫対策

発生害虫はマメシンクイガ、ヒメコガネ、ホソヘリカメムシ、ハマキムシである。しかし、今まで団地的なまとまりで30年間大豆の連作を続けており、天敵も含め虫のバランスがとれる圃場生態系になっているせいか、害虫が発生しても問題にならない。“ただの虫” も含めて、一人勝ちさせないバランスが大事だと考えている。
病気では紫斑病が登熟期の降雨と関係で散見されるが、極く少なく選別もしないし、業者も問題にしない。

在来種で有機大豆のブランド化推進 -重粘土壌の排水対策に注力-

経営概要

滋賀県琵琶湖西岸部の安曇川の沖積土からなる肥沃な地帯であるが、重粘土壌のため排水条件は良くない。
経営耕地は拡大傾向にあり、現在水田1630a、畑30a、合計1750a(うち借地1630a)である。ほかに作業の全面受託や作業受託をしている。現在の作付面積は水稲が1630a (飼料稲250aを含む)、大豆が120a、カボチャ20a、アドベリー30a等である。有機JASによる栽培は水稲が600a、大豆が120a、他は特別栽培が多い。
労働力は従業員4名のほか、パート1名(加工業務に週5日で1 日2~3時間勤務) である。大豆の販売は仲間の有機農業グループと共に、卸への販売が3割、自家加工用向けが7割である。値段は相対で決めている。自家加工用の多くは販売向け(7割が味噌製造: JAの機械を借用して製造)、3割は納豆用(納豆業者委託) で、自社ブランド品として販売している。大豆及び加工品の販売先は直売のほか、卸やネット販売によっている。

大豆の栽培概要

大豆は連作すると収量が低下するので(2年が限度)、排水条件の良い圃場を選び田畑輪換で行っている。品種は以前、奨励品種の「タマホマレ」、「オオツル」、「エンレイ」も手がけたが、遅播きでは収穫期が遅いのでやめた。現在は在来種の「ミズクグリ」(扁平の青豆系統種) であり、味噌、醤油、豆腐、納豆向けの味の良い品種である。種子は自家採種で大粒の種子を使っている。慣行栽培の奨励品種は6月上中旬播きであるが、同時期に播種するとつるぼけしやすいので、7月10日~15日播種としている。畝幅は70cm、株間は20~25cm、深さは2~3cm、1粒播きで、播種量4kg/10aである。しかし、時雨や降雪が早くくる地域のため、収穫期が12月中旬になることが問題である。そこで、収穫時期を12月上旬まで早めるため、播種期を1カ月早め、本葉8葉で摘心をして草丈を抑え収穫期を早める摘芯栽培を検討している。摘芯栽培は、他の品種で仲間が実施しており増収効果も見込める。
単収は湿害による年次変動があり100~120kg/10aである。大豆作付120aのうち有機JAS認定対象は60aで、4年前に認証を受けた。

排水・土づくり・施肥対策

圃場は水はけが良く地力の高い圃場を選んでいる。「ミズクグリ」は肥沃な土壌では草丈が1mを超え、つるぼけし、倒伏しやすいので、水稲後跡の作付では元肥、追肥は無しで栽培している。地域の水田は重粘土壌であり湿田のため暗渠は施行されているが、大豆作には排水が一番大事なので、水はけのよい川の増水で圃場が浸かりにくい上流の場所を選ぶとともに、30aの圃場内にタテに2本の深い排水明渠を掘っている。

雑草対策

播種前に耕起し雑草を完全に押さえ込むように留意している。播種後20日頃に第1回目の中耕を行う。その後培土を行うが、培土を2回行う時は1回目の実施後7~10日後に行う。問題は天候で、梅雨が長引くと雑草が繁茂し手取り作業が大変になる。中耕・培土は小型テーラーで行っている。有機農業にとって雑草制御は大きな問題であるが、雑草より大豆の生長を早く大きくすれば問題はない。

病害虫対策

紫斑病がかなり発生するが降雨との関係が深いので、排水対策に留意している。しかし、加工向けが多いため実際にはあまり問題にならない。カメムシなども発生するが、水田地帯での作付けであり、カエル、クモなどの天敵も増加しており、生態系のバランスがとれているのかあまり問題はない。カメムシ対策として、畦畔の草刈りを定期的に行っている。

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